この木なんの木きになる木

ごそごそと開拓ごっこ

ヨセミテ 5日目

今までで1番寒い朝。

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陽の光が冷えた体にしみる。

吐く息は白く、昨日の雨が嘘のように空気は乾いていた。


朝起きていつものフードコートでご飯を食べて、キングコブラへ向かう。

ありがたいことに、岩は全く濡れていなかった。


絶対登ると決めた1トライ目、足がスリップ。

2トライ目は足を慎重に置いて、今まで越えられなかった部分を越えた。

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逆光で全然見えない…

 

落ちられない一線を越えたことを感じながらなんとか完登し、岩の上で雄叫んだ。

 


じわじわと湧いてくる余韻に浸りつつも、道を降りてすぐのトルクスパナー(V8)へ移動し、勢いでトライ。

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1トライ目でガバが止まりかけたので、すぐさま再トライして完登。所要時間5分。

今日は登れる日か!

そういえば、アメリカのクライマーはちゃんと気候を把握しているようで、この日はボルダラーの姿を数多く見かけた。


勢いに乗ってブルースリーへ。
しかしあれだけ寒かったのに、日が出てきたらすぐに気温が上がり、あったまった指が冷えてくれない。

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結晶が刺さる右手に力をこめたら、手汗でグニュッとずれる感触があってあきらめた。

お調子者は、しっかり釘を刺されました。

 

 

まだ朝なのに満足感を覚え、今日はキャンプ4で登ると言っていたかずはさん達に合流し、トルクスパナーの横のChapman Overhang(V1)やHug a Rock(V0)で楽しくセッション。

しかしグレードだけで判断するなかれ。

花崗岩らしい繊細なマントル、課題名どおりの挟み込み、シビアなヒールフックなど、内容は多彩で全然侮れなかった。

 

木漏れ日の中の楽しいセッションのあとは、散策した時に見つけた下地の悪いハイボールハンマーヘッド(V5)へ向かった。

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スパッと切れた左側のカンテが美しいライン。
ひとまずトライを開始すると、高さと下地の悪さで思い切った動きができない。
リップへの一手を躊躇して悩んでいると、アメリカ人の190cmオーバーの巨人が来て、トライしていい?と聞いてくるのでオフコースと唱えた。
すると目の前で違うムーブで、めっちゃ声出してリップを叩いて震えながら登っていった。

曰く、スケアリーだそうで。そりゃ見てる方も超スケアリーだったもの。


でもムーブ真似したら登れたので、ホント巨人の方ありがとうございました。

そしてこの課題に付き合ってくれたイトーさん、本当にありがとうございました。


ケガもなくホッとして、平和なワインボルダー周辺に戻ると、かずはさんにアワニー行かない?と誘われたので、喜んでついて行った。

アワニーホテル(今は名前が変わってマジェスティックホテル)のエリアは日陰でとても涼しく、岩質もあまり結晶が主張してないザラザラなフリクションで、とても手になじむ。

Silent Spotter(V7)、Munchkin Lunge(V6)と気持ちよく一撃できたので、調子に乗ってPugelist(V9)もトライしたら登ることができた。

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Silent Spotter

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Munchkin Lunge

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Pugelist

 

かずはさんも目的のトラバース課題を落としたので、ホクホクでキャンプ4へ帰る。


気づけばもう夕方だ。

ミッドナイトライトニングがどうしても心残りだったので、マットを一枚お借りしてトライさせてもらった。
慎重にマットの位置を決めて、祈るような気持ちでライトニングホールドに飛びついた。

すると2トライ目で初めて、あれだけ止まらなかった右手が止まっていた!

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慌てたので足が決まらず落ちてしまったが、舞い上がってギャーギャー騒いだのでギャラリーが集まってきた。

するとその中の1人がアサナのスーパーヒーローハイボールを貸してくれたので、マット3枚でもう一度トライ。
ライトニングホールドを止めた後の足位置もバッチリはまり、マッチしてマントルへ突入。

あまりマントルの記憶は定かではないが、気づいたらガバをつかんで叫びまくっていた。

 

しばらくうるさく騒いだ後、今日は何日分叫んだんだろうと思いながら見守ってくれた皆さんと笑いあった。

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上のスラブが苔々で足を震わせながらはい上がる。
下降路もわかってなくて、コロンビアボルダーの一番低いリップから、けいこさんとジョシュが運んでくれたマットに飛び降りて、何から何までお世話になった感謝を伝える。

そのあとは、なんだかみなさんに祝福の声を掛けられて、夢の中にいるみたいだった。



そんなこんなで、あとは明日の朝少し登って日本に帰るのみとなった。

皆さんにお別れと再会の約束をして(SNSがあるから便利ですね)ひとりのテントに戻って爆睡。とはいかず、体は疲れ切っているのに最後の夜が名残惜しいのか、よく眠れない夜でございました。

 

最終日につづく